MY HERO’S INTERVIEW

松原その子さん(以下そのちゃん)とは彼女がオーナーを勤めていたワインレストラン「flow」時代からのお付き合い。そのちゃんはうちのお客様でもありお互いに行き来しながら今ではなんでも話せる友達に。華やかでセレブリティな社交場に身を置きながら、私生活では太陽や海、土、自然を満喫している。私にとって「気」の良いパワースポットのような友達です。チャーミングで軸がブレない強い彼女のアイデンティティを伺います。


GUEST プロフィール
松原その子 Sonoko Matsubara
1977年生まれ。ソムリエ、ワインスペシャリスト、栄養士、スポーツ栄養スペシャリスト、 トライアスリート。ワインの醸造アドバイザーとして活躍する。昨年、プロデュースしたロゼワイン、『vin rose』を発売。ニュージーランドで作られたこのワインはエレガントでありながらうららかさを感じさせるピンク色。今までのロゼのイメージを払拭する素晴らしい味。その傍ら、現役のトライアスリートとしても日本国内外を飛び回り多忙な日々を送る。 ランニングトレーナーも務め、スポーツ栄養スペシャリストとし“食が体を作る”を自ら体感し、アスリートへの栄養アドバイスも行う。
『vin rose』を味わってみたい方はこちら。 http://www.winetable.jp

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NO.2 役職が人を育てる

立河:そもそもソムリエになったきっかけは?

その子:25歳の時にヌーベルシノワというフレンチスタイルのチャイニーズレストランで働き始めたんです。そこでたまたま支配人になってしまって、ここはちゃんと勉強しないと、しっかりした接客ができないと思って。

立河:フレンチスタイルのチャイニーズってどんなメニューなんですか?

その子:ベースは四川料理。中華って一品の量が多いから5〜6人で来ないと食べられるものが限られてきてしまいますが、ここでは少人数でもいろんな種類を少しずつ召し上がっていただけるというスタイル。しかもワインに合うお料理を出すというコンセプトのお店だったんです。

立河:なるほど。フレンチスタイルでワインに合う中華のお店だったのね。

その子:若いうちにお店を任されてしまって、総支配人はいつもお店にいるわけではないから誰かを頼りにもできない、試行錯誤しながら自分で勉強しました。「役職は人を育てる」ってその時実感しましたね。 単価も高く、当時としてはヌーベルシノワの走りのお店だったんです。 そこには日本を動かしているような企業の社長さんやセレブなお客様が多くいらしていたので、高価なワインが開くんです。そこでお客様が勧めてくださって少し頂いたりして。

立河:若い女の子が支配人だったから、お客様に可愛がられたでしょ?

その子:始めは君みたいな若い子が支配人?って言われましたけど、確かに若かったので謙虚に努めました。そういった方々は若くて頑張っている人間を無下にはしないので応援してくださって。その時、私はソムリエですが、まだまだ経験値が低いのでご指導くださいってお願いしていました。それはそうですよね。明らかにいろんな種類のワインを飲んでいるお客様の方が経験値は高いんです。

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立河:たしかに。経験値に勝るものはないものね。

その子:そう。勉強よりもやっぱり実際に飲んで舌で感じている方が強いし正しいから、その方々に教えを乞うんです。 そうすると皆さんが快くワインを飲ませてくださって。

立河:その後に独立したでしょ?きっかけは?

その子:ちょうど30歳の時に独立しました。ヌーベルシノワのお店はちょうど立ち上げでお店がスケルトンの状態の時から携わらせていただいていたので、産み、育ての苦しみも全部経験して愛着もありました。でも結婚する予定もなくここでずっと続けていくよりは、年齢の区切りでもあったので自分でやってみようと思いました。今だったらまだ若いし、借金してもなんとかなんとかなるんじゃないかという勢いがあったんですね。万が一失敗しても、まだなんとかなる歳だしと思って。

立河:大胆な年頃だよね。でもきっと、自信もどこかであったんじゃないかな?例えば成功させる気負った自信というより、良い意味でなんとかなるっていう自信があったような気がする。あの働きっぷりは(笑)だから成功したんじゃないかな?
というのも、私はそのちゃんが独立した時の「flow」で出会ったのよね。

その子:そうそう。のりちゃん、始めは私を警戒してた(笑)

立河:あはははは。こんなに素敵なお店のオーナーで、こんなに可愛い女の子が誰に媚びるでもなく飄々と接客していて、それなのに来店してる人たち大物ばかりがこぞってそのちゃん目的で集まってたから何者?って思ってました。(笑)

その子:flowはヌーベルシノア時代のお客様がいらしてくださってました。毎日のように会食でお疲れになってるので、そういった方が和でも洋でもなくリラックスして食べたいものを食べていただくお店だったんです。接待でも使えるけど一人でぷらっときてオムライスやナポリタンを食べたいと仰ればお出しする、ワインだけ飲むこともできる大人のファミレスみたいな感じだったんです。使い勝手が良かったようです。

立河:それわかる。私も食事を終えて、もう少し飲みたいなというときや、逆に遅くまで仕事していてお腹ペコペコで、何か食べたいけど何が食べたいのかわからないってときに、そのちゃんを頼って、今日はお腹が空いてるから野菜とお肉が食べたいっていうと賄ってくれましたよね。

その子:洋食おばんざい屋さんみたいな感じだったのかも。

立河:大物ゲストがこぞって行ってたのがわかるなぁ。 それにしても、誰と誰を合わせちゃいけないとか、それこそ気を使ったでしょ?

その子:皆さんこっそりいらしてるんですが、不思議なことになぜかお隣の席の人と打ち解けて友達になってたりするんです。(笑)

立河:それってそのちゃんありきで皆さんリラックスしてるから、そんな和が広がったんじゃない?私も出不精なりに色んな飲食店に行きましたが、居心地のよさやリピートは店主の器量ってものすごく大きい。会いたくない人がいたり、面倒なことが起こると二度と行かなくなるし。

その子:なので、そこは神経を使いました。ご予約の電話をいただいたとき、あ、今日は先にご来店いただいている方にその方を会わせない方がいいなというときは、席がガラガラでも、満席なんですって言ってお断りしていました。(笑)

立河:そういう接客方法はどうやって学んだの?

その子:実はそれを誰かに教わった記憶がないんです。支配人だったお店ではその街が、一つの集落みたいなもので人のコミニティがとても敏感だったんです。なので、お店でなるべくこの人とこの人とは会わせないようにしようっていうのが感覚的に身についていった感じです。例えば、秘書の方からご予約の連絡があったときに、同日同じ業界の方の予約はありませんか?と確認されるので、あぁ、業界はかぶらない方がいいのかなという具合です。

立河:そのちゃんは、その感覚が絶妙だからみんなの信頼を寄せていたのね。 後に、飲食店は夜中まで働かなきゃならない、また、お酒に酔ったお客さんの接客もそろそろ…ということでflowを閉めたわけですが、閉める少し前からそのちゃん、トライアスロンに目覚めてたよね?(笑)

取材/文 タチカワ ノリコ
Photo Takeru

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